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ヒアルロン酸

ヒアルロン酸注射の『入れすぎ』が起こる理由を検証2017.7.14

 

海外でも過剰なヒアルロン酸の不自然さが問題視

「ヒアルロン酸注射をすると顔がパンパンになる」

ヒアルロン酸のようなボリュームを補充するフィラーと呼ばれる材料を注射する治療に対して、そのようなマイナスのイメージを持つ人が増えてきています。

私はこれまでも、必要以上にヒアルロン酸を入れられすぎている例が急増していることに対して警鐘を鳴らし続けてきました。しかし、未だその傾向は止まる気配はなく、目的を見失った過剰な注入方法を行う傾向はむしろ増加傾向になっています。

これは日本に限ったことではありませんし、世界的にも同様の例は存在します。ネットでも以前は美しいハリウッドスターが顔がパンパンになっているビフォーアフター写真は多く見ることができます。

日本でも以前からこのような例は見かけましたが、最近は特に「入れすぎ」の例は急増中で、日本の芸能人でも同様の症状を頻繁に見かけるようになりました。

ヒアルロン酸が入れられすぎてしまう理由はいくつかの段階があると分析しています

①注射後にお客様から「気になる部分が変わっていない」と言われることに対する医師の恐怖心

 お客様ご自身がヒアルロン酸注射後の仕上がりを鏡で確認して、「どこが変わったかわからない」と感じた場合、その中にはクリニックに「料金を支払ったのに全く変わっていない」とクレームの電話をするケースもあるでしょう。一度でもそういったクレームを受けた経験のあるドクターは、お客様が気になっている部位を「しっかりと変化させてやろう」とその部分だけを見て注入を続けます。

 木を見て森を見ずの注入姿勢が、気になるシワやくぼみは解消されたとしても全体的に見るとバランスがおかしかったり、目元が圧迫されたような印象などの過剰投与を引き起こすすべての始まりになることがあります。

 本来の目的は「自分もしくは周囲の人に綺麗になったと感じさせたい」であるべきです。しかし、気になる部分の改善ばかりに執着しすぎるとこの本来の目的が見失われはじめます。「確かにシワやくぼみはなくなったけど、全体的にみると顔がパンパンで変」という仕上がりを作り上げる第一歩です。

②注射後にお客様が感じる「もっと入れたい願望」の暴走

 ヒアルロン酸注射はレーザー治療や高周波などの引き締め系の治療と比べて、より短時間にしっかりとした効果を実感しやすい治療です。はじめてヒアルロン酸注射を受けた人の多くは「もっと早くやっておけば良かった」と目をキラキラとさせてその変化に感動するも多くいらっしゃいます。このお客様の中のヒアルロン酸注射に対するいいイメージが中には後々で悪さをすることがあります。

 「まだ気になる部分の症状が少し残っているから、もっと入れたらさらに良くなる気がする」

 「しばらく経って注射直後より減った気がするから、すぐにもう一度補充したい」

 もちろん減った分を補充することは悪いことではありません。しかし、この気持ちが暴走し始めるお客様がいらっしゃることが問題です。客観的にみて、まだ全く補充する必要がない人も「ヒアルロン酸を注射して欲しい」とクリニックを受診するようになります。

③ヒアルロン酸を入れたいというご要望のお客様をドクターが断りたくない

 本来であれば客観的にみてヒアルロン酸を補充する余地のないお客様が「もっと入れたい」と来院したとき、ドクターはきっぱりと「まだ必要ありません」とお断りしなければなりません。しかし、このようなシチュエーションではしっかりと信念を持った医師で無い限りどうしても医師はヒアルロン酸注射を行うことを選択してしまいがちです。

 これは、「ヒアルロン酸を入れれば入れるほど売上げが上がる」ということに加えて、「このようなご要望の方に対して、補充の必要がないことを説明することが大変な労力を要する」、「やりたいと言っていることをやらないことで、不満に思われてしまうのが嫌」という3つの理由が背景にあります。つまり、入れたいと言われたら医師はその必要はないと感じていたとしても入れてしまった方が経営上も良いしラクなのです。

④注入するドクターの美的感覚の破綻

 心の優しいドクターの中には、「もっと入れたい」というご要望でいらっしゃるお客様を悲しませたくないと、まだ不要な人に対しても要望通りにヒアルロン酸の補充の注射を行ってしまうこともあるでしょう。全体的な完成度はどうあれ、注射後は『お客様が気になっているポイント』は変化します。お客様には気になっているポイントが変化していることで満足して喜んでいただけます。

 これを日常的に繰り返していると「このぐらい多めに入れた方が喜んでもらえるんだな」という偽物の成功体験が積み重なって、ドクターの美的感覚にズレが生じてきます。このようにして知らず知らずのうちに自分が過剰投与によって不自然な仕上がりを作り上げるドクターになっていってしまいます。

 こうして「もっと入れたい」というお客様と「美的感覚のズレを生じたドクター」がタックを組むことになると恐ろしいことが起こります。誰が見てもおかしな「顔がパンパンの仕上がり」が量産されて、クリニックのスタッフも全員が顔がパンパン。来院するお客様の顔もパンパン。そして何より、注入しているドクター自身の顔もパンパンになってきて、一般の人が誰が見ても不自然な仕上がりが量産されていても「綺麗になった」とそのクリニックにいるすべての人が思っているという美的感覚破綻の伝染がおこります。このようにして一般社会の美的感覚とのギャップが大きなコミュニティが形成されるようになります。

質の高いヒアルロン酸注射とは

ヒアルロン酸注射は非常に素晴らしい治療です。しかしその仕上がりが素晴らしいものになるかどうかは、「注入側のドクターがしっかりと揺るぎないコンセプトを持っているか」ということが最も大切です。

ヒアルロン酸注射はあくまでボリュームの補充が目的です。本来の自分自身の顔から離れることを希望する整形的な入れ方の場合は別として、自然な美しい仕上がりを目指す場合には「補充して良い量」には限界があります。

本来ボリュームがあった部位に対して、減った量だけ的確に補充することがヒアルロン酸注射で最高のクオリティを目指す場合に大切なことだと思います。

症状が軽い場合にはヒアルロン酸注射のみで完全にキレイになる例も多く存在します。しかし、症状が重い場合には加齢変化によるボリュームの減少はあくまで老化要素の一つにすぎませんので、ヒアルロン酸注射ですべてを完成させようとせず、「補充して良い量」にとどめる。皮膚や皮下組織の緩み、靱帯の緩みなどの残りの要素をレーザー系のマシンや時には手術などの併用によってさらに上を目指すべきだと思います。